こんにちは、現役MRのきすけです。
この記事を書いているぼくは、これまで2つの大学を担当して、大学担当としては7年目になりました。
MRの世界では、花形とも言われる「大学担当MR」
今年に入ってから大学担当になった方や、これから目指されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「どんなことを知っておいたら良いのだろう。」
「出来れば、大きな失敗はしたくない…。」
そんな風に感じている方もいらっしゃると思います。ぼくも1年目のときは、まさにそんな不安を抱えていました。
そこで今回は、大学担当MR1年目の方へ向けて、「知っておいたほうが良いこと」や「実例から学ぶ失敗を避ける方法」などについてお話させていただきます。
この記事を読むことで、大学担当MRとして身につけるべき最低限の知識や失敗を避ける方法を知っていただけると思います。
ただ、くれぐれも先に言っておきます。正直、大学担当者としてのレベルは、そんなに高くないです。なので、初級編としてご参考ください!
大学担当MR1年目が知っておくべきこと
まずは、「大学担当MR1年目が知っておくべきこと」について
3STEPでお話させていただきます。
大学担当MR1年目が知っておくべきこと
STEP1:基礎知識偏
STEP2:情報収集偏
STEP3:マインド偏
STEP1:【基礎知識編】
まずは、大学担当MRとして、最低限知っておきたい基礎知識から
知っておくべき基礎知識は次の3つです。
知っておくべき基礎知識
- 病院と大学病院の違い
- 医局内の序列
- 医学部の序列
それぞれ見ていきましょう。
「病院と大学病院の違い」
いきなりですが、クイズです。
Q、「”病院”と”大学病院”では、どのような違いがあるでしょうか?」
これぱっと答えられた方、すごいです。
・・・・・・・・・
正解は、“役割“の違いです。
病院は「診療」のみですが、大学は「診療」に加えて「研究」と「教育」の役割も担っています。
これが、市中病院とは異なる大学病院の「特殊性」です。
一方、教育の面からも、医学部のある大学には、附属病院を置くことが定められています。〇〇大学附属病院と聞くのはそのためです。
「医学または歯学に関する学部」を置く大学には、教育研究に必要な施設として、付属施設である「付属病院」を置く物とすると、大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)第39条により定められています。
引用:学校教育法 昭和三十一年文部省令第二十八号大学設置基準
また、違う切り口として、MR目線で感じる、病院と大学担当の仕事の違いについてもお話させていただきます。
MR目線「病院と大学担当 仕事の違い」
他にもありますがざっとこんな感じです。
とにかく、仕事量が多くハードワーク必須です。きっとそのあたりは覚悟されていることと思います。
もちろん大変さと引き換えに、大学担当になって身につくこともたくさんあります。
成長できることも、大学担当MRになる大きな魅力です。
ここで、もう一つクイズです。
Q、「全国に医学部を置く大学はいくつあるでしょうか?」
- 81
- 103
- 67
・・・・・・・
正解は、
81です。
各大学のホームページはこちらからから飛べます。全国の大学病院の数、聞かれることはありませんが、マメ知識としておさえておきましょう。
「医局における序列」
Drの役職についても知っておきましょう。
これもせっかくなのでクイズ形式で
Q、「つぎの役職の方々を、”えらい順“に並べて下さい」
- 准教授
- 講師
- 教授
- 助教
・・・・・
心のなかでの回答ありがとうございます。
正解は、
「教授→准教授→講師→助教」です。
これ、さらっと正解した方、すごいです!
ぼくは恥ずかしながら、”講師”よりも”助教”の方が上だと思っていました。
講演会の企画など、相談したり案内するときは、基本、えらい人から順にがセオリーです。
「へー、知らなかった」という方は、これを機に覚えてしまいましょう。
それぞれの役職の詳細に関しては以下のとおり。※スマホの方は見づらいと思うので、元ページへ飛んでください。
よくある質問
「教授=厳格で怖い」
ぼくもそう思って大学を担当したのですが、結果、違いました。
もちろん、厳格でいまだに毎回震えながら面会している教授もいますが、むしろ紳士で温厚な方が多い印象です。そして、心底尊敬できる人格者が多い。教授たちから人生で大切な多くのことを学ばせていただきました。
そしてあの人たち、
本当、タフで優しいです。
象徴的なエピソードとしては“こちら“をどうぞ。
「医学部の序列」
全国の各大学の医学部には、独自の「格付け」なるものが存在します。
格付けのランクは、研究や医学部の”偏差値”や”入学難易度”にも影響を及ぼしており、設立された年代が古いほど序列と入学難易度は高くなる傾向があります。
そして、医学部にも受験界でよく言われる私立御三家というものがあります。合わせておさせておきましょう。
私立御三家
- 慶應義塾大学
- 東京慈恵医科大学
- 日本医科大学
下記より、ご自身担当の大学の立ち位置を確認しておきましょう。※スマホの方は画像小さいと思うので、元ページへ飛んでください。
引用元:メディヒェン
「格付けが上の大学」には、医学界において、”知名度とブランド力”がともないます。そして、Drにもいくつかメリットがあると言われています。
Drが”格の高い医学部を卒業するメリット”
①:臨床医として腕を磨ける
→ 優れた医療機関が多いため、技術を磨くチャンスがたくさんある。
②:就職先に困りにくい
→ 長い歴史があるので、関連病院の数が多い傾向。卒業後、回してもらえる可能性が高い。
③:研修医も目指しやすい
→ 優秀な教授が集まり、研究実績も豊富で国からの交付金も多額なため。
STEP1:【基礎知識偏】いったん内容を振り返ります。
- 病院と大学病院の違い
- 医局内の序列
- 医学部の序列
各項目、なんとなく理解できましたか?
次は、担当の大学に関する情報収集を行いましょう。
担当初期にガツっと情報をまとめて整理しておくことで、その後の仕事がずいぶん楽になります。
STEP2:【情報収集偏】
これは新人のころ、
尊敬する上司によく言われた言葉です。
「誰でも見れる情報を知らないのは、それはもはやリスクである。」
言わずもがな、ネットに載っている情報はモレなくチェックすることが大切です。
ぼくも担当間もない頃は、カフェにこもって、まずは大学のHPをくまなく調べ、情報の整理をしていました。
じゃあ、「具体的にどのようなことを調べたら良いのか?」
持論になりますが、以下3つのことは最低限調べておくことをオススメします。
大学担当MR1年目が知っておくべき3つのこと
①:大学を知る
②:関連を知る
③:顧客を知る
①「大学を知る」
まずは、担当大学のHPを見て、大学全体を知りましょう。
くり返しになりますが、公開されている情報を知らないのはリスクです。
ターゲットとなる科は限られるかも知れませんが、大学全体のことを知っておくと、今後、俯瞰して課題に向き合えたり、顧客にも幅のある質問や提案が出来たりします。
担当間もないころこそ、じっくり時間をとって調べる絶好の機会。
経験上、ココを逃すともうやらないことが多いです。
自分の場合、具体的にはこんなことを調べてまとめました。
- 大学の歴史や
- TGとなる科の医局の歴史
- 歴代の教授に
- 経営陣の顔ぶれ
- どのような科があるのか
- 稼ぎ頭の科はどこだろう?
- 大学全体でどのような課題があるのか
- その課題にどんな打ち手を講じているか
などなど
自分が大学の病院長や経営陣になったつもりで、考えや思いをめぐらせてみると、いろいろなことに気づくことができます。
そしてこのリサーチは、直接実績に響くものではないですが、中長期的にはとても役立ちます。まずは、担当大学のホームページを見て、大学全体を知りましょう。
②「関連を知る」
多くの場合、大学には医局の医師が外勤で派遣されている関連病院があります。
例えば、日本大学には”80”を超える関連病院があります。すごい数ですよね。
この関連病院は、大学のHPで調べるか、「〇〇大学、関連病院」とググるとすぐ答えにたどり着くことができます。
そして、ご存知のとおり、こうした関連病院には大学の医局からDrが派遣されているケースが多いです。常勤はもちろん、(〇〇曜日のAMだけ外勤で)といったケースもあります。
なので、
- 「大学にはどんな関連病院があるのか?」
- 「外勤にはどのDrが、いつ、行っているのか?」
- 「紹介元、紹介先はどの施設が多いか?」
こうした情報があると仕事がずいぶんやりやすくなります。
どうしても答えにたどり着けない場合は、Drや秘書さんに聞いてみたり、外勤先の担当MRに探ってもらいましょう。
③「顧客を知る」
「大学全体」→「関連病院」と調べたら、Drについてもじっくり調べていきましょう。大学担当となると一気に責任が増し、気負いがちですが、やることは基幹病院と変わりません。
まずは、前任からの引き継ぎ情報や医局のHPを参考に、「Drの顔と名前」を覚えます。人数が多い人気の科では、30人、40人のDrがいらっしゃることもあります。いくら記憶力の良い方でも最初は苦労するはず。
ぼくは記憶力が絶望的にないので、担当1年目のときは、毎日医局に立ってDrの顔と名前をチェックして、全員覚えるのに、たぶん2〜3ヶ月はかかりました。
そして今は、訪問規制で中に入れないことも多いですよね。そうなると顔を覚えるのがさらに大変です。
「Dr情報はどのようなことを知っておいたら良い?」
基幹病院のDrでそうされていたように、大学でも調べることは変わりません。
調べると良いDr情報
- ご出身
- 年齢
- 卒年
- 出身大学
- ご専門
- 所属学会
- 研究テーマ
- 博士論文
- 調べられそうだったら、
- 製品への評価
- 競合との関係
- 家族構成
- 趣味
- 仲の良いDr
- 同期のDr
- 頼りにされている開業医、など
いつでも情報を取り出せるよう整理しておくことをオススメします。
ぼくも最初に作ったExcel表に、新しい情報を足して、日々updateしています。
※もちろん、個人情報の取扱には十分ご注意ください。
あと、大学担当になると増えるのが、文献を読むこと。避けては通れません。
「文献の調べ方や読み方をもっと具体的に知りたい!」
そんな方は、元MSLで現在は本社経営企画で活躍されている”こういちさん”(製薬キャリア3.0)のこちらの記事をご参考下さい。
文献を読み慣れていない方向けに、くわしくご解説いただいております。>> 初心者・若手MR向け、文献に対する心構えと読む際のポイント
以上、STEP2:「情報収集編」でした。
簡単に振り返ります。
大学担当MR1年目が知っておくべき3つのこと
①:大学を知る
②:関連を知る
③:顧客を知る
これから長く続く仕事を楽にするためにも、最初はじっくりと情報収集する時間をとることをオススメします。
次の章では、個人的にもっとも大切だと感じている“マインド編“についてお話させていただきます。
STEP3:【マインド編】
大学担当1年目、一気に”仕事量”と”責任”が増えるので、そこそこメンタルに来ます…。どんなことでも次のステージに立つと困難が立ちはだかりますよね。慣れるまでが辛抱です。
ぼくも1年目のときは、教授にお叱りを受け、若手Drに冷たくあしらわれ、上司にきつくプレッシャーをかけられ…。
自分の無力さにガッカリしながらも、「なにくそ」と歯を食いしばって毎日仕事していたことを思い出します。
「あっごめんなさい、脅すつもりじゃないんです。」
空回りしないためにも、自身の経験から学んだ、大切な3つのマインドをお伝えさせていただきます。
大学担当1年目3つのマインド
①:まずは慣れよう
②:情報共有しよう
③:俯瞰しよう
①:まずは慣れよう
最初はつい肩に力が入ってしまいますが、まずはとにかく慣れましょう。余計に力が入ると、空回りもするし、息切れしちゃいます。
- 大学までの道のり
- 学内の雰囲気
- 医局の場所
- Drの顔と声
- 他社メーカーの顔ぶれ
すべての”新しい”に慣れていきましょう。
②:情報共有しよう
大学担当になったらこれまで以上にどんどん“情報共有“をしましょう。
なぜなら、大学の情報はエリア担当者にとって超貴重だから
ぼくもエリア担当のとき、大学担当の先輩からの情報にずいぶんと救われました。
- 新しい教授、〇〇がご専門みたいですね。
- 〇〇科は、〜〜患者さんを集めたいみたいです。
- 〇〇先生、今月留学から戻られるみたいです。
当時、大学担当の先輩から教えていただいた情報を、開業医や病院Drの面会のネタにはさむことで、難しい先生に一目置いてもらったり、面会困難Drが面会し放題になったり、なんてことがありました。
きっと、大学の情報も持ってきてくれるし、「おっ、こいつ使えるな。また会ってやるか」と思ってくれたんだと思います。
開業Drも、大学の最近の話題は気になるもの。さらにコロナ以降、Dr同士の情報交換の場は確実に減っており、大学関連の情報はこれまで以上に重宝されることが多いです。
コマ目に情報共有することで、エリア担当者の力になりましょう。
③:俯瞰しよう
エリア担当をしているときは、自分のエリアのことだけきちんと把握していれば、おおかた仕事もうまくいきます。しかし、大学は波及力も大きく、より広い視野が必要になってきます。
都道府県全体、あるいは、2次医療圏単位で俯瞰した視点を持つことが大切です。
ぼくも担当間もないころは、「医療計画」と「地域医療構想」をじっくり読み込みました。(長くて退屈なのでナナメ読みですが…)
そうすることで、都道府県全体の現状や課題が見えてきます。森を見ることで、情報提供の内容や提案する企画にも”幅と深み”が出てきます。
前章でも述べさせていただきましたが、最初はじっくり情報収集の時間を確保されることをオススメします。
STEP③:マインド編、振り返ります。
大学担当1年目3つのマインド
①:まずは慣れよう
②:情報共有しよう
③:俯瞰しよう
大学担当にも慣れ、Drの顔も覚えてきて、上記でもの足りなくなったら、
ガンガン数字を上げましょう!
昔は大学担当というだけで、社内でチヤホヤされた時期もありましたが、今はそうもいきません。エリア担当者同様、数字に追われます。
ぼくの場合、所長もまぁまぁ厳しいので、大学のDrが外勤で行っている関連病院の採用や数字についてもプレッシャーを受けます。最初は慣れるのが大切ですが、余力が出てきたら、たくさんアポイントを取って、効果的な企画を打って、数字をあげましょう。
大学で数字を上げるコツについては、開業Drから良いヒントをいただきました。こちらのTweetもご参考ください。
開業医 Dr(内科/40代前半)
からいただいたヒント『大学や病院で新薬の処方出したかったら、″30代前半″の医者を狙うといい。その年代はひと通り仕事も覚えて、ストイックでやる気に満ち溢れて、どんどん新しいものを試したい頃。オレもそうだったし、後輩見ててもそう。″30代前半の医者″は狙い目よ』
— 外資製薬MR / きすけ (@Kisuke_MR_nomad) September 21, 2022
ここまで読んでいただいた方、お疲れさまでした。
大学担当1年目が知っておくべきことに関して、「基礎知識編」「情報収集編」「マインド編」と3STEPでお話をさせていただきました。
あと、もう一つ気になることがありますよね。
そうです、「失敗しない方法」です。
こういうのは、実例から学ぶのが手っ取り早いです。
ぼく自身の恥ずかしい失敗談、風の噂で聞いた他社の失敗談、全部で8つのエピソードを紹介します。(すべて実例です)
どれも「そりゃそうだよね」と思われることばかりかも知れませんが、大ケガしないためにもお付き合いください。
大学担当MRの失敗エピソード8選
先に、キーワードを3つにしぼってお伝えすると
- 礼を尽くす
- 嫉妬させない
- 順番を守る
といったところです。
それでは一つずつ見ていきましょう。
①:後任が行かなくなって”処方0”
まずはベーシックな失敗談から
“助教 / 若手Dr(30代)” から聞いた他社さんの話
Dr:「〇〇製薬の前のAさんは頑張ってくれていたのに、後任全然来ないから、処方全部変えた。」
これはなにも驚きませんよね。開業医や病院でもよくある話ですが、大学でも一緒でした。
新規開拓も大切ですが、会社として関係値の高いDrこそ、まずは大切にしなければいけないと学んだ事例でした。
②:教授の天敵を役割者に立てて激怒
大学担当になると、講演会などの企画に携わることが一気に増えます。そのため、講演会関連のトラブルには注意が必要です。
とくに、教授の天敵のDrを、講演会の役割者に立ててしまいトラブルになった。あるいは出禁になった。という話はめずらしくありません。せっかくの講演会でマイナスを生んでしまうのはもったいないですよね。
ぼくも“大失敗”の経験があります。
これは大学担当2年目のときの話です。
とある講演会で、
A教授を役割者(座長)に立てました。これまで自社との付き合いはなく、関係構築の一環としての講演会でした。
会を2週間前に控えたある日、ぼくの携帯が鳴りました。
イヤな予感がして出ると、別の科のB教授からでした。(B教授とは前任のときから関係値が高く、重要Drの一人でした)B教授:「なにやらA教授と会をやるそうですね。その領域の長は私です。御社のスタンスは良くわかりました。しばらくお付き合い控えます。」ガチャっ
電話を切った手は震え、”もう終わった”と思いました。
事前の情報収集では、ある程度そうしたリスクも想定していましたが、前任も問題ないと言っていたし、他社でも同じような会をやっていたこともあり、正直、そこまで怒られるとは思っていませんでした。
(後日談ですが、意見の合わない出来事があり、これまで良好だったお二人の関係にヒビが入っていたようでした。)
タイミングが悪く、運がなかったと言えばそれまでですが、他からの古い情報で安心してしまっていた、自分の見立てが甘かったのです。出禁こそなりませんでしたが、その後、B教授との関係修復には約4ヶ月の期間を要しました。
この企画をやることで、大切な顧客を不快にさせないか、あるいは、嫉妬させないか。どうしてもわからないときや心配なときは、下のDrや、秘書さん、信頼出来る他社MR、に聞くのもリスクマネジメントになります。企画を作るときの人選は慎重に行いましょう。
③:相談する順番を間違え教授に叱られる
これは自分が大学担当1年目のときの失敗談です。
「新薬を薬審に提出してもらう」という相談を、メインで診療している医師ではなく、教授に先にしました。
なぜなら、そういう大事な相談は、教授に真っ先にすべきだと考えていたからです。
でも教授からは、「〇〇診療はA先生に任せている。A先生に相談したの?まずはそこあたってもらわなきゃ。なんでも僕に聞かないで。そのうえでまた相談に来て。」とお叱りを受けました。
これもチクリと胃が痛む出来事でした。
お気づきかもしれませんが、この教授、部下に権限移譲していてめちゃくちゃ寛大なタイプです。放任主義と言って良いかもしれません。ただ、怒られたのは事実です。ぼくが教授のタイプとスタンスを見極められていなかったことが原因です。
一方、どんなことも「1から10までオレに話を通せ」という教授もいます。(むしろそっちの方が多いイメージです)そうした管理したいタイプの教授には、
- 全国講演会を下の先生に案内することも、
- 医局の先生を講演会の役割者を依頼することも、
- 薬審の申請をお願いするときも、
細やかに話を通しておくことが大切です。
なにか相談や案内事があるとき、誰から先にするのがベストか、それは教授のタイプや案件によっても異なります。判断に迷う際は、上司の助言をもらうのも良いでしょう。
ぼくは、いよいよ困ったら秘書さんに相談することが多いです。教授の隣で毎日仕事をされて、誰よりも教授のことを知っているのは秘書さんです。
大学担当になると、順番を考えることが増えます。
④:随行中、新幹線に乗り遅れて大遅刻
会社のルールや担当する大学にもよりますが、大学担当になると随行業務が増えます。
随行:地位の高い人の供としてつき従って行くこと。引用:コトバンク
もしかすると、随行という言葉に馴染みがない方もいらっしゃるかも知れませんので補足すると、「講演会の演者Drを現地まで一緒にアテンドして、現地では講演のサポートをして、お見送りする」といった、MRでもっとも気が抜けない仕事の一つ。これが随行です。
こんな驚きの他社の事例を聞きました。
講演会の行きの道中、ホームで新幹線を待っている間。
随行したMRは、新幹線の到着を気にしつつも、Drとの話がつい盛り上がり、気づくと乗る予定だった新幹線を乗り過ごしてしまったそう。
結果、次の便に乗れたものの、講演時間には大遅刻。出禁にこそならなかったらしいですが、Drは担当者にずいぶん怒っていたとのこと。
それはそうですよね。そのあとの空気を想像すると、こちらまで冷や汗が出来てきます。
随行は、Drと長い時間を供にし、じっくりと話が出来たり距離を縮める絶好の機会です。しかしその一方、絶対に失敗が許されない仕事でもあります。
⑤:MSLが教授を怒らせてトラブル
よくあるのが、MSL関連のトラブル。これはぼくもありましたし、社内の他のメンバーや他社でもきいたことがあります。
もちろんMSLに助けられることも多いのですが、優秀さと、知識量の多さゆえ、うえから目線でDrにいっちゃう方も少なくないです。
場合によっては、Drを不快にさせたり、怒らせてしまうことがあります。教授をはじめDrを怒らせると最終的に困るのは担当者(MR)です。
なので、もしそうした危うさを感じるのであれば、MSLが関わる範囲をコントロールする、あるいは、上司に相談するなどの対策が必要です。
こちらのTweetもご覧ください。
人柄の備わっているMSLは神だ。
『あの人えらそうだからもう2度と連れてこないで。』と教授に言わしめたMSL。会社の姿勢も疑われたし、その後の火消しはずいぶん大変だった。… https://t.co/FByUZmcSrK
— 外資製薬MR / きすけ (@Kisuke_MR_nomad) March 7, 2023
⑥:長年続いていた研究会を畳んで激怒
講演会のルールも各社のきなみ厳しくなってきましたよね。
それに伴い、長年続いていた歴史ある研究会をやむなくたたまなければいけないケースも増えてきました。
Dr(多くは教授)に、事情を説明して、続けられないことを伝えると、「ルールだから仕方がないですね。これまでむしろありがとう。」と優しくご理解いただくDrもいらっしゃいます。
一方、急にハシゴを外されたと感じ、お叱りを受けたり、それを機に関係が崩れてしまうケースもあります。ぼくも研究会をやむなく畳んだことで、距離が出来てしまった教授もいらっしゃいます。
担当者としては、凹みますし歯がゆい気持ちにもなりますが、会社のルールや事情もあるし、自分一人でどうこうできる問題ではありません。
慣れないうちは一人で抱え込まず、所長や、場合によっては”支店長や部長から謝罪してもらう”など、会社としての誠意を示すのが大切です。
『はじめるのも、やめるのも簡単だけど、続けることはむずかしい』という話を聞いて、本当にその通りだと思った
英語の勉強でも、ランニングでも、Twitterの発信でも、毎日、何かしら、コツコツ淡々と、継続している人を尊敬する
ただ、MRが「長年続いた研究会」を閉じることだけは究極にむずかしい
— 外資製薬MR / きすけ (@Kisuke_MR_nomad) November 23, 2022
⑦:講演会で携帯ピカピカ出禁
これは他社から聞いた背筋の凍る話です。
その日は、A教授が座長のエリア講演会。
演者は、A教授とも親交の深いB教授。A教授のご指名なら、と県外から新幹線で現地へ来てくれました。
会がスタートすると、無事スタートして気がゆるんだのか、MRたちが会場後方で携帯をイジりはじめ、暗闇のなか、画面がピカピカピカピカ。
それに気づいたA教授が会終了後、激怒。
「わざわざ来てくださって講演していただいたB教授に対して、なんて失礼な。
残念です。御社との付き合いはしばらくやめます。」
もしかしたら、この教授に対して、「厳しいな」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、A教授の立場になったら「お前らふざけんな」と思いますよね。社員たちも携帯イジりたいなら会場の外に出るべきだったのです。
せっかくの講演会でこんなことになってしまっては元も子もありません。どんな場面でも、顧客の立場で気持ちを汲んで、立ち振るまうことが大切です。
⑧:秘書さんに手を出して出禁
これが最後のエピソードです。
秘書さんに手を出すのはやめましょう。実際ぼくの知り合いの他社MRも秘書さんに手を出して、結果付き合ったのですが、その話を知った教授が激怒。
その後、担当交代を余儀なくされたにケースを間近に見ました。「彼はなにをしに毎日医局に来ていたんだ。」とご立腹だったそう。正直「付き合ったからいいじゃん!」と個人的に思いましたが、これは教授のタイプにもよります。
秘書さんに恋心を抱いても行動はくれぐれも慎重に。
以上、失敗エピソード8選でした。
どれも「それはしないよ〜」と思われたかも知れませんが、顧客の立場でものごとを考え、誠実に仕事をしていれば、そうそう大きな失敗はしません。
今一度、大失敗しないための3つのキーワードについておさらいします。
- 礼を尽くす
- 嫉妬させない
- 順番を守る
その他、大学に限らず、Drからの教えや本音に関してはこちらの中にある(Drからの教え)に格納していますので、ご興味ある方は合わせてご覧ください。
大学担当MRが知っておくべき4サイト
大学担当者が知っておくと良いサイトについて4つご紹介します。
すでにご存知のものもあるかもしれませんが、ご参考ください。
①:病院情報局
このサイトは、病院版ミシュランとも言われており、“担当大学の特色や強みを知りたい”というときに役立つサイトです。
疾患別の「退院患者数」や「平均在院日数」を中心に、全国の急性期病院の診療実績を比較できる機能も備えており、病院の患者数、医療圏における科ごとのシェアなどがDPCをもとに、独自のデータで”見える化”されています。
病院情報局は大学病院だけでなく基幹病院の情報収集にもオススメです。
「病院情報局ホームページ」スクリーンショット
②:CiNii(サイニィ)
国立情報学研究所(NII、National institute of informatics)が運営するサイトで、さまざまな国内の学術論文を無料検索できるデータベースです。発表されている論文から、Drの専門分野を知ることができます。
また、博士論文も検索することができるので、”Drのことを深く知りたいとき”の情報収集にはとても役立ちます。思い入れのある論文のテーマをMRが知っていて、悪い気をするDrはいないはず。
CiNii(サイニィ)で試しに、担当Drの名前を入れて検索してみましょう。くわしい検索方法はこちらをご参照ください。
「CiNii」スクリーンショット
③:YEN FOR DOCS
なんとこのサイトでは、製薬会社からDrや大学や病院などの研究施設に支払われた金額を調べることができます。(元データは製薬会社がホームページで公開している情報)
「おいおい、そんなこと勝手に公開して良いのかよ」と思われた方、わかります。ぼくもそう思いました。でも、このデータベースが公開にいたった経緯を知ると、納得もできます。
「あのDr、競合も担いでいるのかな?」と気になったときは、 YEN FOR DOCSが役立ちます。担当Drのお名前を入れてみてください。各社の”力の入れ具合”が一目瞭然です。
「YEN FOR DOCS」スクリーンショット
④:慶應義塾大学のHP
人事情報をいち早くキャッチすることも優秀な大学担当者として大切な要素。「新教授が就任してはじめて知った…。」 では、ビジネスでも他社から出遅れますし、社内でも恥をかいてしまいます。
出来れば早めに知っておきたいですよね。情報源はさまざまですが、慶應義塾大学のHPにも学外の公募情報が載っています。定期的にチェックすることをオススメします。
「慶應義塾大学ホームページ」スクリーンショット
以上、大学担当が知っておくべきオススメ4サイトでした。
ブクマするなり、気になったらこの記事にまた戻ってきてください。
大学担当MR1年目:まとめ
今回は、大学担当MR1年目に知っておくべきこと、失敗を避ける方法についてお話させていただきました。
最後に大切なポイントをまとめさせていただきます。
まとめ
- 大学病院は、診療に加え、”教育”と”研究”の役割もになう。
- Drの役職は、えらい順に、教授 → 准教授 → 講師 → 助教
- 誰でも見れる情報を知らないのはリスク。情報収集が大切。
- 最初は気負わず、すべての新しいに、慣れていきましょう。
- 大学の情報はエリア担当にとって超貴重。情報共有が大切。
- 失敗しない為には、礼を尽くし、嫉妬させず、順番を守る。
最初は、業務量も増え大変ですが、徐々に慣れていきます。優秀なあなたならきっとすぐに慣れるはず。
ぼくもまだまだ修行の身なので、お互い、いろいろチャレンジしながら”大学担当MR”楽しんでいきましょう。
大学担当になると講演会が増えます。もう慣れていると思いますが、「講演会の段取り、ちょっと自信ない…」という方は、【超初心者向け】MRのエリア講演会「企画から運営」【7STEPマニュアル】もぜひご参考ください。
講演会を企画する際の考え方、運営の手順についてくわしく解説しています。
※最後に宣伝です。
各種SNSでもMRに関するコンテンツを発信しています。
のぞいていただけると嬉しいです!
\ Follow Me /